幕末に活躍した数々の人物の中でも、2018年の大河ドラマ「西郷どん」の主人公である西郷隆盛は、特に高い人気を誇る歴史上の人物のひとりです。

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西郷隆盛といえば、心も体も大きい豪傑で、明治維新の立役者でありながらも、逆賊として最期を迎えるに至った悲劇の英雄という人物像が広く知られていますが、実際のところ、どのような人物だったのでしょうか?

身内に嫌われていた!?

西郷隆盛を描いたと伝わる絵や像が、現代にもいくつか残っています。その絵のうちの一枚を見ると、太く存在感のある眉や黒目がちな大きな目が印象的です。「大きな度量を持った巨漢の豪傑」という、一般的なイメージに似つかわしい絵です。

NHKの公式HPを見ると、主人公の西郷どんの性格について、「唯一無二」、「男女共にモテた」、「心の優しい熱血漢」などと紹介しています。まだ放送が始まっていないので断言はできませんが、今までの一般的な西郷像をある程度は踏襲していそうな雰囲気ですね。

ところが一方、実際に西郷を身近に見てきた人たちの中には、こうした人格者としての像をひっくり返してしまうような証言を残している人も多数います。

同じ薩摩出身で年代も近い人たちからのこうした証言の具体例を挙げると、「人の好き嫌いが極端である」、「協調性がない」、「異なる意見に耳を傾けようとしない」、「すぐ敵を持つ」等、豪傑にしてはえらく狭量だと思わざるを得ないものばかりなのです。

対立していた立場の側にある人が言うのなら、ただの悪口で片づけられるのですが、身内とも言える薩摩人からこのような批評が出るのは、看過できないところです。

ちなみに、西郷と苦楽を共にした大久保利通は、盟友の性格について、「激情家である」と、褒めているのか謗っているのか、どちらともとれるような表現をしています。

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当時の薩摩藩の事情から考える

西郷隆盛が討幕の指導者として歴史の表舞台に立つ直前の薩摩藩は、保守派と改革派の権力闘争が激しい状態にありました。最終的に、薩摩藩は長州藩と並んで討幕の雄になりますが、藩全体がそこに至るまでには、改革派が凄烈な政争を勝ち抜く必要があったのです。

短い期間で、討幕という極端な方針を貫く方向に藩全体を向けるには、憎まれることを厭わず強引な政治手法を用い、自分の思想を信じて突っ走るぐらい強引さがないと、なかなか実現することができません。

西郷に関する同郷人たちの証言に出てきた「協調性がない頑固者で激情家」という性格は、仲良くお付き合いはできないかも知れませんが、難しい局面を打破する資質を備えていると言えるのではないでしょうか。そう考えると、西郷が本当に彼らの証言通りの人間であったとしても、無理はないように思えてきます。

斉彬との関係

西郷隆盛が、藩主・島津斉彬に忠誠を尽くしていたことは大変有名です。

斉彬本人から抜擢を受け、「御庭方」として江戸に詰めるようになりました。

この御庭方という役職は、身分自体は低い部類に入りますが、斉彬に庭で簡単に拝謁できるという利点がありました。どの役職の者よりも斉彬に近く、彼の考えていることがダイレクトに分かります。

西郷は、立場上動く回りにくい藩主の考えを伝えるべく、ある時は水戸へ、またある時は福井へ、と、縦横無尽に赴きました。

斉彬に仕える期間が長くなればなるほど、西郷の名前は幕府や他藩にも知られるようになります。明敏の誉れ高い斉彬が重宝する家来として、一目置かれるようになったのです。

他藩の寵臣や同志者たちとも接触する機会が多く、後々の活動に大いに役立つ人脈も、このときに着々と広げていきました。

斉彬自身は西郷を高く買っていましたが、周辺の家臣たちはそこまで評価していませんでした。評価していないどころか、「西郷は好戦的な輩で人間関係を険悪にする」と最悪な評価を下していました。

西郷の抜擢に反対する声が多い中、斉彬は、「役に立つ者は俗人には誹謗されるものだ。今のような世の中では必ずしも評判の良い者が役に立つわけではない。」と言い、西郷の起用を実現しました。

もし斉彬がここで強い意思を発揮しなかったら、幕末の偉人・西郷隆盛は生まれなかったかも知れません。

自分を認めてくれる上司の下で能力を発揮できる―、西郷は、こうした幸福を斉彬によって与えられたと言えます。

最後に

豪傑像と離れた観点から西郷隆盛の人物像を追ってみました。

度量の大きい巨漢の豪傑としての西郷像のほうが爽快で心地よいかも知れませんが、斉彬の弟・島津久光との確執や将軍の罪死を主張した徳川家処分案などについて思いを巡らせると、「協調性がない頑固者で激情家」の西郷隆盛もアリなのではないかと思えてきます。

2018年の大河ドラマ「西郷どん」で西郷隆盛がどのように描かれるのか、とても楽しみです。